AIに仕事が奪われるのか?これからの未来を考える、AI戦国時代に必要な「確認する力」
AIに仕事を奪われるのでは、と感じたことはありませんか?
「AIが仕事をしてくれるなら、自分の仕事はなくなるのでは?」
生成AIの話題を見聞きするたびに、そんな不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
私は就労支援事業所でIT講師をしています。利用者さんの理解度やそのときの状況に合わせて、伝え方を考える対人の仕事です。画面の向こうだけで完結するものではありません。福祉の現場に足を運び、人と向き合う仕事をしていることもあり、最近までAIに仕事を奪われる実感はあまりありませんでした。
ただ、生成AIがホームページやデザインを短時間で作る様子を見たとき、正直なところ少し不安になりました。実際に私は、画像1枚をもとにLPのデザイン・画像・コーディングが短時間でそろう体験をしました。「これまで時間をかけていた作業が、こんなに早く進むのか」と驚いたのを覚えています。
これは、私が自分自身に投げかけている問題提起です。AIを使うだけで必ず勝てる、という意味ではありません。むしろ、何を任せ、何を自分で判断・確認するのかを決められる人が必要になるのだと思います。
「仕事が消える」より、仕事の中身が変わっていく
AIによる影響を考えるとき、「職業が丸ごとなくなる」と想像しがちです。しかし、国際労働機関(ILO)は、生成AIの影響を受ける職業が広がる一方で、多くの場合は人の入力が必要であり、職業そのものの消滅よりも仕事のタスクが変化していく可能性を示しています。
OECDも、多くの働く人にとっては失職そのものより、仕事の内容や仕事の質が変わることが重要だと整理しています。AIを補完的に活用できるスキルは競争力に関わり得ますが、AIを使うかどうかだけで雇用が決まるわけではありません。
つまり、「AIに取って代わられるか」だけを考えるよりも、日々の仕事のどの部分が変わるのかを見ていくほうが現実的です。
- 情報を集めて整理する
- 文章のたたき台を作る
- 会議内容を要約する
- 資料やメールの下書きを作る
- 最後に内容を確認し、相手に合わせて判断する
この中で、AIが力を出しやすい作業もあれば、人が責任を持つべき作業もあります。すべてを置き換えるのではなく、役割を分けて考えることが大切です。
対人支援で、AIに任せにくいもの
就労支援の場では、同じ説明でも相手によって受け取り方が異なります。表情や反応を見ながら説明を補い、困っている理由を一緒に探し、その人に合う次の一歩を考える場面があります。状況に応じて対応を変え、関係をつくり、責任を持って支援することは、単純な作業として切り出しにくい部分です。
介護分野の公的な考え方を参考にすると、厚生労働省は、食事・排泄・入浴などの直接ケアと、記録・入力・会議・研修などの間接業務を分けて考えています。間接業務を効率化し、その分を利用者とのコミュニケーションなどに充てる、という考え方です。
就労支援と介護は同じ仕事ではありません。それでも、AIに人との関わりを丸ごと任せるのではなく、記録の整理や資料の下書きといった周辺業務を助けてもらい、人にしかできない部分へ時間を使うという考え方には学べる点があります。
私がAIに任せていること、任せないこと
私がAIを使い始めたのは2023年です。文章要約、ブログの構成、講座資料の整理、スライド準備、FAQ、メールの下書き、文字起こし後の資料化などで助けられてきました。
ただし、ブログも資料もAIに丸投げはしません。AIが出した文章を読み、自分の経験と違っていないか、相手に伝わる表現か、事実として問題がないかを確認します。
- 要約・下書き・情報整理
- メールや資料のたたき台
- 作業手順の整理・アイデア出し
- 事実確認・最終判断
- 相手や状況に合わせた調整
- 専門知識に基づく判断と説明
生成AIによる効果については、特定の顧客支援業務を対象に、解決件数が平均14%増えたとするNBERの研究があります。また、限定された文章作成タスクでは、所要時間が40%減り、品質が18%向上したとするNoy & Zhangの研究もあります。
ただし、これらは対象となった仕事・利用者・条件での結果です。すべての仕事で同じ効果が出るとは限りません。確認にかかる時間も含めて、自分の仕事に合う使い方を考える必要があります。
怖いのはAIではなく、使い方を確認しないこと
AIを使い始めた頃、もっともらしい誤回答に出会ったことがあります。文章が自然なので、確認しなければそのまま信じてしまいそうでした。この経験から、AIを完全に信用せず、人が確認することを強く意識するようになりました。
特に注意したいのが個人情報です。個人情報保護委員会は、生成AIサービスでは入力情報が学習に使われ、出力に現れるリスクがあるとして注意を呼びかけています。
一律に安全とは言い切れません。サービスの規約やプライバシーポリシーを確認し、入力情報が機械学習に利用されるか、利用設定を変更できるかを確かめる必要があります。
個人情報を入力する必要があるときは、「名前だけなら大丈夫」と決めつけないことが大切です。情報を削除したり、仮の内容に置き換えたりできないかも先に考えましょう。私自身、個人情報が含まれる内容は、なるべくAIに開示しないようにしています。
これから必要なのは「AIに任せる力」と「確認する力」
私は、AI活用者と非活用者の差は、特にスピード感に表れやすいと感じています。下書きや整理といった細かな作業をAIに任せられれば、その分だけ、人にしかできない判断や対話に集中しやすくなります。
一方で、AIが出した答えをそのまま使うだけでは、専門性は育ちません。大切なのは、自分の仕事の軸を持ち、そのうえで任せる範囲を決めることです。
- 自分の仕事を「判断」「対話」「繰り返し作業」に分けてみる
- まずは要約やメールの下書きなど、影響の小さい作業から試す
- 出力内容を必ず確認し、事実・表現・個人情報を見直す
- うまくいった使い方を、自分の仕事の手順として残す
AIに仕事を奪われるかもしれない、という不安は自然なものです。でも、その不安をきっかけに自分の仕事を見直してみると、「人として価値を出す部分」と「道具に任せられる部分」が見えてきます。
AIは、生活や仕事を少し楽にするための活用ツールです。すべてを任せる存在ではありません。専門性を軸に、AIを使い、確かめ、より大切な仕事に時間を使う。私はそれが、これからの働き方の一つになると考えています。
参考資料
- ILO「Generative AI and Jobs: A 2025 Update」
- OECD Employment Outlook 2023
- 厚生労働省「介護分野における生産性向上」
- NBER「Generative AI at Work」
- Noy & Zhang, Science(2023)
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起」
